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金色のふわふわの髪が額に触れる。
目の前にはこんな俺を綺麗だと言った、純粋で優しい男が眠っている。
キースが日本酒が手に入ったよ!今日一緒に飲まないか?と会社まで押しかけて来たのだ。
ベンさんは、相変わらず愛されてるなぁ。と微笑ましく見てるだけだった。
そのまま半ば強引に拉致られ、食事をしながら日本酒を楽しんだ。
キースも日本酒に慣れて来たのか、今日持って来たのは『黒龍 石田屋』と言う日本酒だ。
ワインのようなフルーティーな飲み口で、非常に飲みやすい。と言い出すと、キースはそのまま包み込むような笑顔でニコニコしていた。
いざお開きにして帰ろうとした時、私は虎徹に腕枕をしたいんだ!と来たもんだ。
嫌だ嫌だと言っても、腕枕をしたいんだ!と言って抱え込まれ、モゴモゴしているとそのまま寝息を立てられ、今に至った。
強引だ…。と思いながら許してしまう自分も、惚れた弱みと言う物だろう。
寝付けないので、先に寝てしまったキースの顔に手を添えてみる。
鼻筋がしっかり通っていて、彫りが深い。
睫毛は髪の色と同じで金色。まるで太陽のように煌めいている。
まだ20代の張りのある肌と少し厚い唇。
触っていてなんだか恥ずかしくなって来る。
力強く抱え込まれている為キースの胸に顔を埋めて、睡魔が来るのを待つ。
本人の前では決して言わない言葉を、今なら言える。
 
「愛してるよ。キース」
 
聞こえるか聞こえないか分からない声で、少しだけの愛の言葉を囁く。
そして目を閉じるのが日課になりつつあった。
 
 
 
ヒーローと言えども簡単に言ってしまえば、会社勤めのごくごく普通のサラリーマンである。
役職と言うものは特にはなく、普通に通勤ラッシュのモノレールに潰されながら出勤し、仕事をこなす。と言っても
出動要請時にヒーローになる。といったものだ。
ただし、人気が出て来ると、取材だのなんだのと言った事がついて回る。
 
と言う事で、よく眠っているそこの大型犬を起こすのだ。
今日は朝から取材だそうだ。俺は相変わらずの通常勤務。
ただし朝はお互いヒーローとして、トレーニングルームで一度顔を合わせる。
取り敢えず胸を潰しておかなければいけないので、サポーターをつける。これで少しだけ胸板を作れる。
準備が出来たらキースが気持ち良さげに眠っている布団の裾を持ち、一気に捲り上げる。
 
わあ何事だい⁉と必ず言って目を覚ます。
絶対起きている。絶対こいつは起きている。と毎回思いながらも笑ってしまう自分がどうしようもなかった。
 
「朝食出来てるぞ。早くしないと冷めてしまうぞ」
「それはいけない!今すぐ行くよ」
 
あ、歯を磨いて顔を洗う事!と付け足す。
 
 
「どうした。何かついてるのか?」
 
コーヒーを飲んでいると視線を感じ、真っ直ぐ見つめて来るキースに問う。
 
「いや、私は本当に幸せだなぁと実感していたんだ。不快な思いをさせてすまない」
 
どうしようも無いぐらい澄んだ瞳と、真っ直ぐな言葉に顔が熱くなる。
こいつは本当に自分の気持ちに正直なんだな。と感心してしまう。
 
「不快な思いじゃない。その…ありがとう…」
「こちらこそありがとう。虎徹。昨日より愛している」
「ば!そ、そんな事を言うな!恥ずかしい!早く食べて仕事行くぞ!」
「ははは。虎徹はとっても可愛いね」
 
頬に軽く口づけをし、怒られる前に退散だー!と言って逃げた。
 
「~~~~!」
 
朝からこんな調子じゃあ保たない…。
子供に振り回されている気分だった。

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