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    「んもーアントニオったらこんなに私を酔わせてどうするつもり?」

    艶かしく艶やかな唇と、其れに似合うだけの美しい指先をアントニオの厚い胸板に這わせる。

    「ば、良い加減にしろ。飲んで酔ったのも自分のせいだろ?取り敢えず送ってやる。今日は車で来てないよな?」

    そう言う行為に慣れているのか、軽くあしらいネイサンの隣に立つ。
    こうして見ると雄々しい戦士と、人を魅了する魔女のようだ。

    「飲むってわかってる場所に車でくるおバカさんは居ないわ」
    「って事で虎徹。俺はネイサンを送って帰る。お前は…キースを宜しくな」

    アントニオは虎徹にキースを託した。
    そのままじゃ家にすらたどり着けんだろうと。
    確かに羽目を外し過ぎたか、酔い潰れている。
    と言うか、あの後3杯ぐらい飲ませて止めさせた筈なのに…。よっぽど弱いのだろうか?

    「ああ。ネイサン、アントン今日はありがとうな」
    「今度は違う場所でな。あんまりココばっかりだと周りの目も気になるだろ」
    「ネイサンが綺麗過ぎて目立つからな」
    「虎徹…、今度あなたを頂こうかしら?」
    「わりい。ネイサンすまん」
    「分かればよろしい」

    2人がタクシーに乗り込み見送る。
    さて、此れからこの大きなワンちゃんを運ぼうかね…。

    今いる場所から自分の家迄は歩いて10分程度で、非常に近い。
    飲み会のセッティングをアントンに頼むと必ずここになる。
    お前の家から一番近い場所を選んでやってるんだから、必ず歩いて帰れるぐらいに抑えておけ!と毎回お母さんか!とツッコミを入れるのが当たり前になっていた。

    「体格が良いだけに、流石に重い…」

    すっかり夢見心地の大きなワンちゃんは、虎徹におんぶされながらムニャムニャと子供みたいに口を鳴らす。
    身体を鍛えてて良かった…。とヒーローの時以外で初めて思ったかも知れない。

    全く若い奴等に余計なプレッシャーを与えるなっつーの。

    ハンドレットパワーを使いたくなるが、ぐっと気合を入れて自宅を目指した。

    ブロンズステージの中でも大きめのメゾネットタイプの我が家に到着。
    まぁお前の住んで居るところよりは狭いかも知れないが、寝るだけだ。我慢しろ。
    やっとこさ家に着いて、大きなワンちゃん事、キースを自分のベッド迄運んだ。

    今日はソファーで眠ればいいか。
    明日朝一叩き起こして風呂に入れて、朝飯食わして出勤させればいいか。と沢山頭の中を駆け巡る。
    俺の服じゃあ絶対入らない。と言う事は上着だけでも洗濯しておくか…。などと考えて、上着を脱がしていく。
    眠っている人間の洋服を脱がす事は簡単なことではなく、かなり四苦八苦した。
    さて脱がそうと思ったら、思わぬ方向に寝返りを打つ。
    しかも何度も。そう何度も。
    流石に運ぶだけで疲れきっていたので、ハンドレットパワーを使って上着を剥いだ。
    洗濯機に入れて回す。
    その間自分はお風呂を済ませておこう時間短縮。

    「ヨシ!」

    お風呂から上がり、洗濯も完了していた。
    アイロンをかけられる物は先にかけ、キースが着ていた上着を消臭スプレーで臭いを落とす。
    明日このまま仕事に行って焼肉臭いはないからな…。
    一通り終わらせ、明日の朝食の準備をする。
    ただ焼けば良い。と言うところ迄。それ以上は正直面倒臭かった。

    様子を見にいくと布団を蹴落としていた。
    やっぱり大型犬…。と一言ため息をついて布団を掛ける。

    「お休み。ヒーロー。」

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