
あなたは、私の人生で唯一、一番大切な人。
You are the only important thing to me in my life.
「好きだ。とても大好きだ。」
そういうと彼女はいつもさみしそうな嬉しそうな顔をする。
唇にキスをしようとすると、
「そう言う言葉とキスをして後悔はしないか?」
しないよ。あなただから。
優しく髪を撫でながら。
私は彼女に優しくキスをする。
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1
新たなヒーローとしてデビューして間もない頃少し孤独だった。
自分でも言うのは何だが、決して争いが好きなわけでも無い。
ましてやヒーローになれるとも思っていなかった。
だが、私の能力を気に入ってくれて私は思わぬ所でヒーローになった。
其れからトレーニングを積み期待のヒーローとしてデビュー。
其処まではとても素晴らしいストーリーだろう。
けれどもデビューはできても其処からがが大変だった。
ポイント争い、自身を隠し通し逆恨み等を避ける為の徹底的な監視。
立ち振る舞いなど全て筋書き通りにしなければならなかった。唯一自分を少し出せる所が、自宅とヒーローが集まるトレーニングルーム。
「よ。今からトレーニングか?あんまり無理すんなよ?」
先輩ヒーローのロックバイソンが、一足先にトレーニングをしていたのか額の汗をタオルでぬぐい声をかける。
筋肉の付き方も理想で、屈強な戦士と言う言葉がよく似合う。「おはよう!そしておはようございます!ロックバイソン先輩!」
「相変わらず独特な話し方だな。まぁ力まずやろうや。身体が資本だからな」
「はい!」ここでは監視が無い。自然な自分で居られる。こんな話し方も笑ってくれる。
やれ直しなさいだの、気を遣わなくて済む。「お、おはよう~。相変わらず早いね」
のそっと出て来たのは正義の壊し屋事、ワイルドタイガー。
今寝起きと言わんばかりな表情で、ひょろひょろと歩く。
男の身体の割にはすごく線が細い。ポキッと骨が折れそうだ。
この線の細さで1、2を争う人気ヒーローなのだ。「虎徹、お前また飲んでたのか?顔色悪いぞ?」
「何言ってんだよ。俺は低血圧なの。確かに昨日飲んでたけど残ってないぞ?」
「全く…。いい見本にならないなー。こんなやつ見本にするんじゃ無いぞースカイハイ」
「ちょ、お前いい加減にしろよ。存分に俺を見習ってくれてもいいんだぞー」ヒラヒラと手を振りながら2人はいつものように会話を始める。
2人はとても仲が良い。昔からの知り合いでポイント争いで忙しいヒーローの中でもとても珍しい。「お二人はとても仲が良くて、羨ましい」
「おお!じゃあ期待のヒーローとの親睦を図る為に今日は一緒に飲みに行くか?アントン店押さえてくれよ」
「俺に強請るな!スカイハイの分は出せてもお前はきちんと払えよ」
「うえーケチ。いいもん。ネイサン呼ぶから」
「頼む!彼奴だけは呼ばんでくれ!最近彼奴の眼差しが怖い」
「っと、俺らだけで話を進めたけど、今日の夜は大丈夫か?」ぎゃいぎゃい言ってる中でも気を遣って必ず話を振ってくれた。
今日は確か何も無かった筈だ。頭の中に叩き込んだスケジュールを確認しても何も無かった。「是非とも参加したい!」
とすぐに言葉が出ていた。
「スカイハイが仕事終わったら連絡くれよ。あ、プライベート携帯の番号は流石に悪いか…。此れが業務用端末の番号だ。ここに連絡くれたら迎えに行くから」
「了解した!楽しみだ、すごく楽しみだ!」お前は大型犬か。と言いながらタイガーは私の髪を撫ぜた。
非常にくすぐったくて甘い香りがして心地が良かった。
こんな気持ちになれたのは何時振りだろうか?
常に緊張して監視されていた。売り出して軌道に乗るまで、そのヒーローに何かあってはいけないと。
別に素顔を晒して居るわけではないのにと思った事もあったが、少し慣れはじめていた自分を引き戻してくれていて嬉しかった。
一個人として扱ってくれる…。それだけで。