
………。
音が鳴る。
目覚ましのアラーム?いや、違う。
これは携帯の着信音だ…。
手探りでベッドを這う。広くていいけれど、電気を消すと真っ暗になる。間接照明に手をやり、電話に出た。
「…もしもし…」
「あ、牙琉検事ですか?」
「おデコ…くん?どうしたんだい?こんなに早く…」
意外な人物からで少しだけ驚いた。
ディスプレイを見ずに取ったので、誰かわからなかった。
少しだけ不機嫌だったのに、一瞬にして嬉しい気持ちが溢れる。
単純…。と我ながら思った。
「すみません。おやすみでした?」
「休みで寝てただけだよ」
おデコくんからの電話は無い事の方が、圧倒的に多くいつもは僕から連絡を取っていた。
「もし、予定がなければ、薔薇を見にいきませんか?」
「薔薇を…?」
「はい。庭園の薔薇が今週いっぱい見頃なんです。で、是非一緒にと…」
「珍しいね。おデコくんからのお誘いだから喜んで行くよ」
慌ててベッドから身体を起こし、パジャマを脱ぎ捨て手に替えの下着を持って脱衣所に向かう。
「ありがとうございます。折角薔薇と庭園を撮るなら、検事みたいに華のある人をモデルで撮りたいので…」
華のあるって確かに自分の容姿は自覚してるが、誰彼に言われて嬉しいものではない。
おデコくんに言われると心が踊る。
それは愛おしい恋人からのお褒めの言葉だから、余計に身に沁みる。
「何気に凄いこというよね」
「はい?」
「いや、こっちの話。オーケイ迎えに行くから一時間程で行けるよ」
「はい!待ってますね!」
携帯を切り、ソファに投げる。
慌ててクローゼットを確認。今日はどんな洋服をきて恋人に逢おうかな?
もっともっと僕を好きになって離れたくならないように、レンズ越しで愛を語ろう。