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    甘い香り。

    ヒーローとしてもうすぐ一年になる。
    実践と経験も先輩方には及ばないが積んで、バイソン君にもう一人前のヒーローだな。と言われる事が多くなった。
    驕り高ぶる事はしているつもりも無い。ただ一人前のヒーローと言われて嬉しいのは確かだった。

    ワイルド君は相変わらず私の事を、大型犬と言って髪を撫ぜる。
    その時ふと、甘い香りがした。
    何度か嗅いだ事のある甘い香り。
    何処でだか思い出せず少しだけモヤモヤしていた。

    「何唸ってるの?其れじゃあ良い男が台無しよ?」
    「ファイヤー君…。いや、ワイルド君からすごく甘い香りがしたんだ。香水か何かだろうか?」
    「ふふふ。そうねぇ」

    含みのある微笑みをする。

    「香水でも中々良いものじゃ無いかしら?甘い香りは沢山あるけども、嫌らしくない香りですもんね」
    「そうかやっぱり香水なんだね。とても良い香りでずっと嗅いでいたい」
    「あら?其れを本人にしてあげたらどう?彼なら甘んじて受けるでしょ」
    「何故だい?」
    「あなたってタイガーから犬みたいって思われてるんでしょ?犬が彼方此方匂いを嗅ぐ事に剣幕立てたりしないわ」
    「そうか!そうだね!実に的確だ!」
    「あら…。噂をすればよ?行ってらっしゃいな」
    「そうだね!行ってくるよ!ありがとう!そしてありがとう!」

    「ワイルド君ー‼」
    「ようスカイハイってどわああああ!」
    「やっぱり良い香りだ!甘くいて良い香りだ」
    「何なんだーー!た、助けてええ」

    「スカイハイも良い犬になったじゃないの。ねえタイガー?」

    トレーニングルームには虎徹にのし掛かり匂いを嗅ぎ続けるキースの奇妙な図が暫く続いたという…。

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